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Channel: 屋根裏部屋のグダグダ文化論
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DON AIREY 「K2 - TALES OF TRIUMPH AND TRAGEDY -」 (人見元基参加)

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 OVERTURE
◆SEA OF DREAMS Part1
 SEA OF DREAMS Part2
ぁVOICE OF THE MOUNTAIN
ァSONG FOR AL
ΑBALTI LAMENT
АASCENT TO CAMP 4

─CAN'T TAKE UP YOUR MIND
 SUMMIT FEVER
 CLOSE TO THE SKY
 BLUES FOR JT
 JULIE(IF YOU LEAVE ME)
 DEATH ZONE/WHITEOUT
 SONG FOR AL(Reprise)


Don Airey : Keyboards
Gary Moore : Guitars
Keith Airey : Guitars
Laurence Cottle : Bass
Cozy Powell : Drums
Niki Alan : Drums
Chris Thompson : Vocals
Colin Blunstone : Vocals
Mel Galley : Vocals
人見元基:Vocals

…and many more!


 現DEEP PURPLEのキーボード奏者、ドン・エイリーが88年に発表した1stソロアルバム。

 48年にイギリスで生まれたドンは、JEFF BECK GROUPやBEDLAMに在籍したコージー・パウエルの結成したCOZY POWELL'S HAMMERでロックシーンにその名を現し、その後COLLOSEUM 兇忘濱辧△海海妊殴ぅ蝓次Ε燹璽△箸留錣出来る。3枚のアルバムを発表してバンドが解散後はゲイリーのソロアルバムやBLACK SABBATH、コージーのソロアルバムにセッション参加し、コージーに誘われてRAINBOWにメンバーとして加わり、2枚のアルバムを残す。その間にもマイケル・シェンカーやオジー・オズボーンのアルバムで演奏し、RAINBOW脱退後はオジーやゲイリーのバンドを行き来した後にHAMMER時代の僚友でありWHITESNAKEを脱退したバーニー・マースデンのALASKAに加わる。その後もWHITESNAKEのレコーディングに参加した後にJETHRO TULL加入と、ここまで書いてきただけでも多くのバンドに加わっては抜けたりレコーディングのみの参加もあったりがわかると思うが、これでも彼の豊富なキャリアの一部に過ぎない。
 当時はハード・ロックのキーボーディスト自体が少なく、良く言えば何でも弾きこなせる、言い方を変えれば潰しがきくということで彼が重宝されたという事情があるようだ。リック・ウェイクマンがYES加入前から在籍時、一時離脱している間に至るまでいろんなセッションに参加していたのと似ているかもしれない。

 さて、そんなドンの88年と言えばJETHRO TULLを脱退していて正式メンバーとしてはどのバンドにも在籍しておらず、どうやら本作の制作に重点を置いていたようだ。そしてその人脈を生かして作り上げたのが本作である。

 本作はカラコルム山脈の最高峰であるK2で86年に起きた登山者の悲劇を描いたコンセプト・アルバムで、曲間をナレーションでつないでトータルな作りとなっており、同じようなキャリアを歩んできたウェイクマンのソロアルバム各種と同じ性質のものと言えるだろう。
 歌の入っているのは↓┃の6曲のみで、他は全てインスト。で、これが率直に言うと強い印象の残る作品とは言えない。曲自体はメリハリに欠けるし、演奏もスリリングな部分はほとんど聴かれない。完成度自体は高いが、彼がそれまで在籍してきた各バンドのどれとも違ってハード・ロックとも言えないような曲がほとんどで、通して聴いても退屈に思えてしまうのだ。この辺はバンド渡り歩きの続いたことが祟って強い個性を持てなかったからかもしれない。

 ただ、そんな中でも元基さんの参加したとなると事情は変わってくる。あくまでキーボード(シンセ)中心の音作りながらも他の曲よりテンポは速め、恐らく(いや間違いなく)ゲイリーと思われるギターがバックでハードに奏でられ、その上であのシャウトが轟いてあの歌唱が聴けるのだから、それだけでもテンションが上がってくるというものだ。
 後にブルースマンとなってからはセミアコ中心になるゲイリーもこの頃はストラトとレスポールを併用しており、この曲では思いっきりなアーミングが聴けることからちょっとVOW WOWを連想してしまう。あちらでは玲衣さんのキーボードが全体を包み込んでその中で恭司さんがアームをフル活用しているという共通点があるし、その上に「あの声」だから似て聞こえるのは必然的というもの。
 さて、なぜここで日本人の元基さんが?というのは不思議に思う人も多かろうが、当時VOW WOWはイギリスで活動しており、ベースはニール・マーレイ…ドンとはHAMMERからCOLLOSEUM 供■牽押腺牽廓頃のゲイリーのバンドで活動を共にし、WHITESNAKEのレコーディングでも一緒だった間柄だから、恐らくその辺のルートでの推薦だったのだろう。その割にニールは本作に全く参加していないのが不思議だが。
 で、ドラムなんだが、恐らくはコージーだと思うんだけど確信は持てない。アルバムのブックレットには参加メンバーの誰がどの曲で演奏しているかの記載が無いため、断言することが出来ないのだ。コージーの叩き方、特にオカズの入れ方は独特なのですぐわかるはずなのだが、この時代特有のリバーブをきかせた音作りのためにその辺の見極めが困難になっている。
 それはゲイリーにしても同様で、このでのアーミングやイ任竜磴まくり、その流れからのは彼に違いないだろうが、他の曲に関しては全く判別出来ない。

 豪華なメンバーを迎えながらも地味な内容が受け入れられなかったのか本作は大して話題にもならず売れもせず、私も発売当時レンタルこそしたものの購入に至らなかった。結果本作は長いこと日本では廃盤となっていまだに再発されておらず、私は激しい後悔の念を抱くことになるのであった。中古市場でも高値が付いているし、もうすっかり諦めていたが、最近ようやく妥協しうる上限くらいの金額で出品されていたために思い切ってゲットしたのである。
 というわけで元基さんコレクションもようやく欠けていたピースが加わったわけだが、こうなると怖いのが「最新リマスター再発」…その時に私はどうするんだろう?まあ、その時はその時ということで。

 なお、ドンはこの後長いことバンドに所属せずにセッション活動を中心にし、ゲイリーとは付かず離れずの関係だったり、日本のANTHEMのレコーディングにも参加したりという感じだったが、2000年にはゲイリー・ヒューズ率いるイギリスのバンド・TENにメンバーとして加入。そちらはアルバム1枚で脱退するが、その前後はウリ・ジョン・ロートのツアーに断続的に参加したのと並行してジョン・ロードが欠席していたDEEP PURPLEのツアーにも代役として加わり、02年のジョン脱退をもって正式メンバーへ昇格し、今に至る。各種セッションもいまだに続けているが、もうメンバーとなって10年以上経過しているし、ようやく安住の地を見つけたといったところだろう。
 実はその間にもソロアルバムは発表しており、特にグラハム・ボネットの歌った曲やゲイリー・ムーア存命時の音源を含んだ14年の4作目「KEYED UP」はかなり出来が良く、「なぜ88年にこの感じでやってくれなかったんだ?」と言いたくなる。まあ、その辺は安住の地を見つけて曲作りにも積極的に加わるようになってから創作力もアップしたと解釈しておこう。

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